一時期は幹線道路沿いに何店舗も見かけられたチェーンの閉店理由について、SNS上では「経営破綻したのではないか」「人気が完全に落ちたのではないか」といった推測が飛び交いました。しかし、外食産業の取材データと店舗関係者の声を照らし合わせると、単純な集客不振とはまったく異なる構造的な力学が浮かび上がってきます。
第一の決定打となったのは、店舗オーナーの高齢化と事業承継(後継者難)です。ペコペコという屋号は、大手セントラルキッチン型の完全直営チェーンとは異なり、創業スピリットを共有した各オーナーシェフが現場に立ち続ける暖簾分けや独立フランチャイズに近い形態で広がりました。昭和40〜50年代に脂の乗り切った気概で店を立ち上げた店主たちも、令和へ至る過程で高齢に達しました。仕込みから深夜営業まで立ち仕事が極めて過酷な肉焼きの職人技を、次世代へそのまま引き継ぐことは容易ではありませんでした。
第二の障壁となったのが、近年の急速な食材・エネルギー原価の暴騰です。公益社団法人日本フードサービス協会の統計資料や輸入通関統計を振り返っても明らかなように、2026年代以降の国際的な穀物相場上昇、円安の長期化、牧草牛や米国産牛の仕入れ値暴騰は、厚切りステーキを大衆価格で提供するモデルに極大の圧力をかけました。チェーン規模の一括大量購買力を持たない単独の暖簾分け店舗にとって、利益を残しながら従来の分量を維持するハードルは限界に達したのです。
さらに、1990年代以降に地方幹線道路を席巻した大手ファミリーレストランチェーンの台頭や、2010年代の立ち食い・格安ステーキ旋風など、肉専門業態の競争環境苛烈化も影響を及ぼしました。激浪のなかで「引退」を選んだ店舗オーナーが重なり、結果として外食ファンの目には閉店ラッシュとして映ることになったのが深層のメカニズムです。