宮島あなごめしを語る上で外せない二大巨頭が、宮島口に店を構える「あなごめし うえの」と、島内の閑静な路地に佇む「あなごめし ふじたや」です。両者は同じ「あなごめし」という名称でありながら、アプローチが根本から異なります。
宮島口駅 あなごめし 発祥の歴史を持つ「うえの」は、明治34年(1901年)の創業。駅弁として誕生した背景から、「冷めても美味い」ことを計算し尽くした独自の味覚設計が特徴です。穴子の頭や骨からじっくり取った濃厚な出汁で炊き上げた醤油ベースの味飯(味付けご飯)の上に、甘辛いタレを幾度も重ね塗りしながら直火で香ばしく焼き上げた蒲焼がびっしりと敷き詰められます。口に入れた瞬間の炭火の燻香と、噛み締めるほどに広がる穴子の凝縮された旨味が圧倒的な存在感を放ちます。
対する「ふじたや」は、厳島神社の出口から大願寺の先へ進んだ住宅街に位置し、宮島あなごめし ミシュラン一つ星を獲得した唯一無二の名割烹です。こちらの最大の特徴は、注文を受けてから天然穴子を白焼きにし、特製のタレをくぐらせた後、熱々の杉のせいろで蒸し上げる「せいろ蒸しスタイル」にあります。蓋を開けた瞬間に立ち上る杉の清々しい香りと湯気、そして箸で持つと崩れそうなほどフワフワに仕上がった穴子の身は、まさに職人技の極み。添えられた本わさびとお新香が、上質な脂の乗った穴子の輪郭を鮮やかに引き立てます。