藤原啓治さんが演じた代表作キャラクターは、コミカルな三枚目から冷徹な悪役、情に厚い指導者まで極めて幅広いグラデーションを誇ります。その筆頭格といえば、テレビアニメ『クレヨンしんちゃん』の父親、野原ひろしです。1992年の放送開始から四半世紀以上にわたり演じ続け、「足が臭くて情けないけれど、家族のためなら命を張れる理想の父親」という人物像を日本のカルチャーに定着させました。
映画吹き替えの分野において金字塔となったのが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)におけるアイアンマン(トニー・スターク/ロバート・ダウニー・Jr)の吹き替えです。傲慢で皮肉屋でありながら、内面に脆さと崇高な自己犠牲の精神を秘めた天才科学者の声を、藤原さんは見事なリアリティをもって演じ切りました。原語のロバート・ダウニー・Jrの軽妙なアドリブ感に完全にシンクロした日本語表現は、映画ファンからも「神吹き替え」と絶賛されています。
さらに、『鋼の錬金術師』のマース・ヒューズ中佐、『交響詩篇エウレカセブン』のホランド・ノヴァク、『HUNTER×HUNTER(第1作)』のレオリオ、『銀魂』の服部全蔵、『青の祓魔師』の藤本獅郎、ゲーム『キングダム ハーツ』シリーズのアクセルなど、出演作品の詳細まとめを紐解くだけで、日本のアニメ黄金期を支えた主柱であったことが明白です。