「ダンボールのみかんが数日でカビてしまう」というトラブルの裏には、輸送中の重量負荷と植物生理学的な弱点という2つの明確な原因があります。みかんの果皮は非常にデリケートで、箱詰めされて輸送される際、最下段のみかんには上の層から数十kgもの継続的な圧力がかかり続けます。この圧力によって細胞膜が破れて果汁がにじみ出ると、空気中に常在する「緑カビ病菌(ペニシリウム・ディジタタム)」や「青カビ病菌(ペニシリウム・イタリクム)」にとって絶好の栄養源となってしまうのです。
ここで知っておくべき決定的なノウハウが、ヘタを下に向ける理由です。みかんの構造上、果頂部(お尻の側)は皮が薄く果肉の細胞が柔らかいため、圧迫を受けると瞬く間に潰れてしまいます。対して、枝とつながっていた「ヘタ」の部分は繊維が密集しており、果実の中で最も硬く頑丈な強度を持っています。さらに、ヘタを下にして接地させることで、果実自身の呼吸開口部が適度に遮られ、無駄な水分の蒸散や呼吸熱の発生を抑制する効果も得られます。
また、青果物流現場で鉄則とされるのが腐ったみかんを分ける重要性です。カビが発生した果実は大量の胞子を周囲へまき散らすだけでなく、植物ホルモンである「エチレンガス」を急激に放出します。このエチレンガスが隣接する健全なみかんの老化と軟化を加速度的に早め、わずか2〜3日のうちにダンボール一帯へと腐敗の連鎖を引き起こします。傷や打ち身がある個体を最初に見つけ出し、健全な実から隔離することが被害を食い止める防波堤となります。