大洗磯前神社の起源は、平安時代の『日本文徳天皇実録』に克明に記されています。文徳天皇の斉衡3年(856年)12月、大洗の海岸の岩礁に神が忽然と降臨し、「我は大奈母知(おおなもち)、少比古奈(すくなひこな)の命なり。昔、この国を造り終えて去ったが、今再び人々を救うために還ってきた」と告げたと伝えられています。
この神託を受け、主祭神として大己貴命(大国主命)を祀ったのが大洗磯前神社の始まりです。大己貴命は国造りの神であり、縁結び、福徳円満、家内安全、商売繁盛、厄除けなど、現世におけるあらゆる幸福を司る神として信仰されています。荒れ狂う大海原を前にして鎮座する神域は、自然の猛威と神聖な息吹が直結したダイナミズムを放っており、訪れる人々に圧倒的な生命力と精神的な浄化をもたらします。
特筆すべきは、同じく856年にひたちなか市に創建された酒列磯前神社(さかつらいそさきじんじゃ)との深い絆です。酒列磯前神社には、国造りの相棒であり医薬・健康・醸造・航海安全を司る「少彦名命」が祀られており、両社は古くから「対の宮」「兄弟神社」として崇敬されてきました。大洗で大己貴命の広大な包容力に触れ、酒列で少彦名命の癒やしと延命長寿の力をいただく「2社参り」を行うことで、本来の調和とご利益が完結するとされています。