ネット上の掲示板やSNSでは「定価でのやり取りなら法的に完全にシロ」「チケット代+システム利用料+送料をもらうだけなら問題ない」という言説が散見されます。しかし、この解釈には重大な落とし穴が存在します。
刑事責任の観点から見れば、チケット不正転売禁止法が罰則の対象としているのは「販売価格を超える金額での転売」です。したがって、純粋に券面記載の定価以下でチケットを譲り渡す行為自体は、同法の処罰規定には直接抵触しません。しかし、司法判断における「営利目的転売の判断基準」は、一般に考えられている以上に厳密です。
例えば、「チケット本体は定価だが、送料や手数料の名目で数千円上乗せする」「ファンクラブ限定の安価なグッズと抱き合わせにして高値で売却する」といった手法は、実質的な差額利益を得る脱法行為とみなされ、警察の捜査対象となった事例が存在します。過去の裁判でも、外形上どのような名目を付けていようとも、客観的に定価以上の金銭が支払われている実態があれば違法と認定される傾向が明確になっています。
さらに見過ごせないのが「主催者の利用規約(民事上の契約関係)」との兼ね合いです。法律上の罰則を受けないとしても、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケットなどの規約では「営利非営利を問わず、正規ルート以外での第三者への譲渡」を一律で禁止しています。オークションサイトやSNS等で定価譲渡した事実が主催者側に露見した場合、規約違反としてチケットは即座に失効し、出品者・購入者の双方がファンクラブ強制退会や将来のチケット抽選からの永久除外といった重いペナルティを科されます。「法的に無罪であればすべて許される」という考えは、エンタメ界の現場では一切通用しません。