親指の付け根の突き指において、臨床現場で特に警戒されるのが以下の3大疾患です。
1. 母指MP関節側副靭帯損傷(スキーヤー母指)
親指の第2関節にあたるMP関節の親指側・小指側を支える靭帯が損傷する病態です。スキーのストックを握ったまま転倒した際に多発したことからスキーヤー母指(あるいはゲームキーパー母指)とも呼ばれます。特に内側(尺側)の靭帯が完全に断裂すると、断裂した靭帯の断端が腱膜の下に潜り込んでしまう「ステナー損傷(Stener lesion)」を起こし、自然治癒が極めて困難になります。この状態を放置すると、手術を行わなければ関節の安定性を取り戻せなくなります。
2. 親指付け根の激痛と内出血を伴う「剥離骨折」
靭帯が強い力で引っ張られた結果、靭帯の付着部ごと骨が剥がれ落ちる病態です。受傷直後からズキズキとした拍動性の激痛が生じ、広範囲に内出血の紫斑が広がるのが特徴です。骨片のズレが大きい場合は整復固定が必要となります。
3. 親指付け根の関節内骨折「ベネット骨折」
親指の手首に近い関節(第1手根中手関節:CM関節)に縦方向の強い軸圧がかかった際に発生する脱臼骨折です。骨折線が関節面に及び、筋肉の牽引力によって骨片がズレやすいため、単なるギプス固定では整復位を保てず、ピンニングやスクリューを用いた外科的固定手術が選択されるケースが多く見られます。