この名曲の誕生背景を語るうえで、作詞・作曲を手掛けたシャーマン兄弟の存在は欠かせない。リチャード・M・シャーマンとロバート・B・シャーマンのふたりは、冷戦下の緊迫した世界情勢の中で「世界はひとつ」という平和への願いを、わずか数小節の親しみやすいフレーズに凝縮させた。ウォルト・ディズニー・カンパニーが手掛けたアトラクション「イッツ・スモールワールド」のテーマ曲として生まれたこの楽曲は、単なるアトラクションの背景音楽を超えて、世界的な平和のシンボルへと昇華したのである。
数あるディズニーソングの中でも、これほど構造がシンプルでありながら深い情操を呼び起こす作品は稀だ。コード進行は極めて明快で、主調のトニックとドミナントを中心に展開される。しかし、その簡素さゆえに、演奏者のタッチやテンポ設定によって表情が劇的に変わる。テーマパーク業界の歴史を塗り替えたサウンドトラックが、なぜ半世紀以上にわたり音楽業界の第一線で愛され続けるのか。その答えは、鍵盤上で弾くたびに発見できる音の豊かな重なりにある。