油屋で働く女衆(湯女)の多くはナメクジの化身、男衆(湯男)は青蛙やヒキガエルの化身として描かれています。その異形の世界の中で、リンはすらりとした体躯と整った顔立ちを持ち、一見すると人間そのものに見えます。そのため「千尋のようにかつて人間界から迷い込み、名前を奪われて働かされているのではないか」という「人間説」が根強く語られてきました。
しかし、スタジオジブリ公式の資料集『The Art of Spirited Away』や当時の設定資料を確認すると、リンの初期設定は明確に「白狐(びゃっこ)」と記述されています。作中で描かれる俊敏な身のこなしや、少し吊り上がった切れ長の瞳、口元を尖らせる表情には、狐やイタチ、テンといった小動物の面影が色濃く残されています。
完成版の映画では動物の耳や尻尾といった直接的な特徴は削ぎ落とされたものの、彼女が「八百万の神々が訪れる世界の住人(妖怪・精霊の類)」である基本構造は変わりません。人間のような温かい心を持ちながらも、本質は神話的な世界に息づく白狐の血を引く存在である点が、リンというキャラクターの神秘性を際立たせています。