舞台上でひときわ強い存在感を放つのが、登場人物の感情や性格を色彩で視覚化する独特の化粧法「隈取」だ。顔の筋肉や血流を強調するように筆を入れる手法は、劇場の遠目からでもキャラクターの本質を一目で理解させる見事な知恵と言える。赤は正義や勇気、青は冷酷な悪役、茶や黒は妖怪や霊魂を表し、それぞれが鮮烈な色彩美を誇る。
荒々しく勇猛なヒーロー像を確立した「歌舞伎十八番」の演目群では、この化粧が圧倒的な効果を発揮する。一方で、仇討ち劇の最高峰として愛され続ける『仮名手本忠臣蔵』のような重厚な人間ドラマでは、繊細な表情の変化と豪快な演出が見事に調和し、観客の涙と歓声を誘う。