体験談を精査すると、発症者の大半が「本格的な発作が起きる前」に、特有のピル血栓症の前兆サインを経験していたことが判明しています。しかし、そのサインの多くが日常的な疲労や筋肉痛に類似しているため、見落とされやすい点が血栓症の最大の罠です。
最も頻度の高い初期症状は、下肢の静脈に血栓が形成される深部静脈血栓症(DVT)によるものです。一般的な筋肉痛や「こむら返り」と、血栓症によるふくらはぎの痛みと腫れには、明確な臨床的差異が存在します。
脚で発生した血栓が血流に乗って肺の太い動脈を塞ぐと、エコノミークラス症候群としても知られる肺塞栓症(PE)へと進行します。この段階に至ると、低用量ピル血栓症の初期症状は脚の違和感から上半身の危機的兆候へと一変します。
体験談で語られる具体的な肺塞栓症の症状には、「階段を2階まで上がっただけで息が切れ、倒れ込む」「深呼吸をすると胸に鋭い痛みが走り、空気が吸えない」「締め付けられるような胸痛と冷や汗が止まらない」といったものが挙げられます。これらの異変を察知した際には、迷わず救急車を要請する決断が求められます。
国際的に血栓症の早期発見基準として定められているのが、頭文字を取った「ACHES(エイクス)の兆候」です。ピルを服用しているすべての人が暗記しておくべき警戒サインです。
- A(Abdominal pain):激しい腹痛(腸間膜静脈などの血栓疑い)
- C(Chest pain):激しい胸痛、鋭い息切れ、咳に血が混じる(肺塞栓症の疑い)
- H(Headache):激しい頭痛、めまい、意識障害(脳静脈洞血栓症や脳梗塞の疑い)
- E(Eye problems):見えにくい、物が二重に見える、視野の欠損(網膜静脈血栓症の疑い)
- S(Severe leg pain):ふくらはぎの激痛、片足の腫れ、赤み、歩行困難(深部静脈血栓症の疑い)