弟が命を絶つ約1週間前、約6年間にわたり取材を続けていた講談社の『週刊現代』記者に対し、ノートやメールに綴られた長編の手記が託されました。そこには、絶望的な逃亡生活の中で唯一の希望であった「婚約者との破局」が、死を決意させた最大の引き金であったことが克明に記されています。
過酷な境遇を理解し、一度は結婚を誓い合ってくれた女性の存在は、弟にとって生き直すための最後の防波堤でした。しかし、結婚の話が相手の親族へと伝わると状況は一変します。「あの一族の血を入れるわけにはいかない」「将来生まれてくる子どもがどうなるのか」という激しい反対に遭い、彼女の親族関係までもが引き裂かれそうになったのです。
手記の中で、弟は自責の念を次のように吐露しています。
「彼女をこれ以上苦しめたくない。自分が生きている限り、自分と関わるすべての人を不幸に巻き込んでしまう」「犯人の弟であるという事実は、どれほど誠実に生きようとしても消し去ることができない」
加害者の家族であるという属性が、自分自身のみならず、自分を愛してくれた他者の未来までをも破壊してしまうという恐怖。この婚約破棄によって「自分には幸せになる資格も、生きている価値もない」という絶望的な結論へと至り、自死という選択肢へ決定的に傾いていきました。