ベルベットのソファ、カチカチと時を刻む柱時計、タバコの煙が消えた店内に今も残るノスタルジックな陰影。南区に点在する純喫茶は、昭和の時代から時計の針が止まったかのような美しい佇まいを保っている。銅製のシュガーポットやサイフォンの揺れる炎を眺めながら過ごす時間は、何物にも代えがたい。
ここで注文すべきは、やはり王道の小倉トーストだ。こんがりと焼き上げられた厚切りトーストの上に、艶やかな自家製餡と塩気の効いたバターがたっぷりと乗る。口に運んだ瞬間に広がる甘じょっぱいハーモニーは、まさに伝統が生み出した傑作。サイフォンで丁寧に抽出された苦味の強いブレンドが、餡の甘さをどこまでも軽やかに引き立てていく。