なぜ、彼女は危険を回避できなかったのか。その背景には、演劇活動を続ける若者たちが直面する厳しい経済状況がある。家賃を抑えるためにセキュリティの甘い古いアパートを選ばざるを得ない現実。夜遅くまでの稽古と、生活費を稼ぐための深夜バイト。心身ともに疲弊した状態では、迫り来る危険への警戒心が薄れてしまうのも無理はない。
「夢を人質に取られている」。ある現役の劇団員はそう吐露する。低賃金で働き、劣悪な環境に耐えることが「美徳」とされがちな業界の体質が、結果として若者たちを危険な状況へ追いやっていくスパイラルが存在していた。