誰に頼まれたわけでもないのに、頭の中でわざわざ最悪の結末をシミュレーションしてしまう――この不可解な現象の根底には、人類が生存を維持するために発達させてきた原始的な防衛本能があります。人間の脳、とりわけ感情を司る偏桃体は、ポジティブな出来事よりも危機的な情報に素早く反応する「ネガティビティ・バイアス」を備えています。あらかじめ最悪の事態を想定しておくことで、いざというときのショックを和らげようとする無意識の防衛機制です。
しかし、生命の危機がほとんどない日常生活においてこの機能が暴走すると、日常の些細な刺激に対して過剰なアラートを鳴らし続けます。これが勝手に想像して不安になる心理の正体です。特に周囲の刺激に敏感な気質を持つHSPは不安になりやすい傾向が強く、他人のささいなため息や声のトーンの変化をキャッチしては、頭の中で何倍ものリスクとして処理してしまいます。脳が「あなたを守るため」に鳴らしている警報が、結果として自分自身を追い詰めるパラドックスを生み出しています。