ネット上の掲示板やコミュニティでは、「うちの子は成猫になっても全く喉を鳴らさない」「愛情を感じてくれていないのでは」という飼い主の悲痛な相談が後を絶ちません。しかし、猫がゴロゴロ言わない原因の多くは、愛情の欠如ではなく個体差や生い立ちに根ざしています。
そもそも、子猫がゴロゴロ言う時期は生後数日から始まります。目も見えず耳も開いていない生まれたての子猫は、母猫の母乳を飲む際、「私は無事でお乳を飲めています」と母親に伝える振動サインとして喉を鳴らします。母猫もまたゴロゴロと鳴らし返し、授乳中の安心感と居場所を振動で伝達し合うのです。
ところが、以下のような事情を持つ猫は、成長しても喉を鳴らさない傾向が顕著です。
- 早期の母子分離や人工哺育:生後間もなく母猫から離れ、人間の手で育てられた猫は、母猫との「喉鳴らしによる相互通信」を経験していないため、鳴らし方を学習していないケースがあります。
- 過酷な野良生活の経験:成猫になるまで過酷な外の世界で生き延びてきた個体は、音や振動を出すことが天敵に居場所を知らせる命取りになるため、本能的に喉鳴らしを封印している場合があります。
- 触覚のみの極小振動(サイレント・パー):人間には聞こえないほど音量が極めて小さいだけで、喉元にそっと指を当てると実はかすかに振動しているというケースも全体の約3割に上ります。
喉を鳴らさないからといって、決して飼い主を嫌っているわけではありません。頭を擦り付ける、喉元を見せる、ゆっくり瞬きを返すといった他の愛情表現が見られるなら、その猫なりの深い信頼関係が構築されている証拠です。