病院のベッドサイドで説明を受ける段階では想像しにくいのが、退院後に待ち受ける胃瘻の在宅介護負担と現実です。インターネットの相談掲示板や介護家族の手記には、「朝昼晩の注入作業とチューブ洗浄に追われ、精神的・時間的に拘束される」「カテーテルを抜いてしまわないか夜も熟睡できない」という切実な告白が溢れています。
日々の管理で中核を占めるのが、胃瘻栄養剤の種類と注入時間のコントロールです。旧来の液体栄養剤(濃厚流動食)は点滴のようにボトルから自然滴下させるため、1回の注入に1時間から2時間を要し、1日3回で計3〜6時間もの見守りが必要となります。注入中に患者が横に倒れると胃食道逆流を起こして窒息や誤嚥性肺炎を招くため、ベッドの背もたれを30〜45度に起こした姿勢を厳格に保たなければなりません。
この過酷な介護拘束を緩和する手段として普及が進むのが「半固形栄養剤」です。ヨーグルト状の粘稠度を持つ製剤を加圧バッグやシリンジを用いて胃内に短時間(10〜15分程度)で注入する手法で、逆流や下痢の発生率を下げ、介護者の拘束時間を劇的に短縮する効果が認められています。
また、胃瘻カテーテルの交換時期と頻度の管理も家族の重荷となります。先端を水風船で固定する「バルーン型」は交換痛が少なく在宅で医師による交換が可能ですが、寿命が短く1〜2ヶ月ごとの交換が必要です。一方、シリコン樹脂で固定する「バンパー型」は4〜6ヶ月持ちますが、交換時の引き抜きに痛みを伴い、病院の内視鏡室へ通院して交換を行うケースが一般的です。さらに、胃瘻造設者の受け入れを制限しているショートステイや介護施設も少なくないため、訪問看護ステーションとの綿密なバックアップ体制構築が欠かせません。