中谷一博の芝居が持つ最大の引力は、小手先のテクニックではなく、泥臭いまでの人間味と生々しい感情の発露にあります。1979年10月2日生まれ、北海道出身の彼は、若くして華々しいスポットライトを浴びたタイプではありません。デビュー初期から外画(洋画・海外ドラマ)の吹き替え現場で徹底的に鍛え上げられ、マイク前の立ち振る舞いから声の距離感、呼吸の詰め方に至るまで、現場の職人たちから厳しく叩き込まれた実力派です。
事務所経歴においても、トリアス、オフィスPAC、ぷろだくしょん★A組、フリーランス、BLACK SHIPを経て、現在は鈴村健一が代表を務める「インテンション」に所属しています。移籍を重ねた歩みは、表現者として己の演技を磨き続け、より高いレベルの芝居を求めて妥協しなかった証左と言えます。外画吹き替えで培った「画面内の生身の俳優に呼吸を同調させる技術」こそが、後にゲーム業界を揺るがす名演を生み出す揺るぎない土台となりました。