明治維新後、南禅寺の塔頭跡地に政財界の重鎮たちが競って構えた「南禅寺界隈別荘群」。山縣有朋の無鄰菴をはじめ、住友家の中林寺別邸、細川家の別邸など名だたる豪邸が並ぶ中にあっても、敷地の規模、建築の質、庭園の手入れの深さにおいて、碧雲荘は別格の存在感を放ち続けています。
現在も専属の庭師によって日々徹底した手入れが行われており、樹木の剪定から苔の一本一本に至るまで、大正期の情景が寸分の狂いもなく維持されています。2006年には主屋、大門、能舞台、茶室など計16棟の建造物が国の重要文化財に指定され、美術史的・建築史的な価値は不動のものとなりました。
近年、ネットやSNS上で碧雲荘の鮮烈な紅葉写真や内部の様子が散見されることがありますが、それらの多くは過去の学術調査報告書、公的な出版物、あるいはごく一部の招待者が撮影した貴重な記録です。一般に開放されないからこそ、その美しさは一切の俗化を免れ、今も神秘のベールに包まれたまま輝きを放っています。