サスペンスとしての『3年A組』は、景山澪奈を死に追いやったフェイク動画の作成者を追う形で進行しました。第1話から第9話にかけて、生徒の嫉妬、恐喝、裏社会の半グレ集団、そして名声に目が眩んだ熱血教師・武智大和(田辺誠一)へと疑惑のリレーが繋がれていきます。
しかし、最終回で明かされた3年A組黒幕と犯人の経緯は、特定の犯罪者を告発して終わる安易な勧善懲悪ではありませんでした。武智教授の悪行すらも、事件の引き金に過ぎなかったのです。
澪奈を本当に屋上へと追いやったのは、架空のSNS「マインドボイス(Mind Voice)」上で、真偽不明の動画を根拠に罵詈雑言を浴びせ、匿名の正義感を振りかざして攻撃し続けた「無責任なネットユーザー全員」でした。柊一颯が教室を爆破し、日本中を人質に取った本当の目的は、世論という名の顔の見えない怪物に、自らが犯している殺人の自覚を突きつけることにあったのです。
「クルックルッパッだ。よく考えろ」という柊の叫びは、SNSのタイムラインで日常的に繰り広げられるキャンセルカルチャーの病理を、2019年の時点で正確に予見していました。情報が溢れかえる2026年の情報空間において、このメッセージの持つ重みは増すばかりです。