多くの観光客が集中するのは境港駅前から伸びる水木しげるロード周辺ですが、舌の肥えた地元住民や港湾関係者が日常的にハンドルを握るのは、港の荷揚げ場に近い昭和町や外江(とのえ)、あるいは米子市境に近い流通エリアです。観光情報誌の境港海鮮丼おすすめ人気ランキング上位に並ぶ店舗の多くは、内装や演出に優れる一方で、どうしてもテナント料や観光プロモーション費が丼の価格(1杯2,500円〜3,500円)に転嫁されがちです。
対照的に、境港海鮮丼地元民おすすめ穴場として長年支持される店舗は、簡素な店構えでありながら仕入れルートが別格です。その筆頭が、境港水産振興協会のすぐ近くに位置する「お食事処 かいがん」や、中野港近くの「味処 美佐」、さらには日吉津方面の「魚処 山芳亭」といった名店群です。これらの店舗では、朝競り落とされたばかりの鮮魚を中間マージンなしで厨房へ直行させるため、2,000円前後の価格帯でありながら、他店の大盛り特上クラスを凌駕する厚切りのネタが惜しげもなく盛られます。
地元民が店を選ぶ際の決定打は「白身魚のエッジ」と「脂の酸化具合」です。獲れたてを急速に処理した境港のヒラマサやスズキ、タイは、身にしっかりとした弾力(いわゆる「いかり身」の状態)が残っており、噛むほどに甘みが広がります。観光客向けの解凍マグロ中心の構成とは一線を画す、真の港町クオリティを体感したいのであれば、駅から少し足を延ばしてでも卸売拠点周辺の食堂を目指すべきです。