江口寿史氏のプロフィールを紐解くと、日本のサブカルチャー史そのものと言っても過言ではない濃密な軌跡が浮かび上がります。1956年3月29日生まれ、熊本県水俣市出身の江口氏は、2026年3月に70歳の古希を迎えます。血液型はO型。私生活では1990年に元アイドルの水谷麻里氏と結婚し、当時大きな話題を呼びました。家庭人としての私生活を守りながら、武蔵野市吉祥寺を拠点に街のカルチャーと深く結びついた創作活動を続けてきたことでも知られています。
江口寿史氏の経歴と代表作において、まず金字塔として挙げられるのが『週刊少年ジャンプ』で1977年に連載を開始した『すすめ!! パイレーツ』です。架空のプロ野球チーム「千葉パイレーツ」を舞台にした不条理でハイテンポなギャグ漫画は、当時の少年誌の常識を覆し、熱狂的な支持を集めました。続く1981年にスタートした『ストップ!! ひばりくん!』では、美少女にしか見えない少年・大空ひばりを主人公に据え、洗練されたファッションやポップアートの要素を大胆に導入。後の「美少女文化」「オタクカルチャー」の先駆けとなる歴史的傑作となりました。
一方で、江口氏の漫画家人生は「締切との過酷な戦い」の連続でもありました。絵のクオリティへの異常なまでの執着から原稿を落とすことが重なり、休載や未完のままの中断を繰り返すエピソードは、ファンの間ではもはや伝説化しています。自著やインタビューでも「白い原稿用紙に向かうと、どうしても妥協した一本の線が引けなくなる」と吐露していた通り、徹底した完璧主義が漫画の週刊連載というシステムと衝突した結果、活動の主軸はやがて漫画から一枚絵のイラストレーションへと移行していきました。