馬上杯(ばじょうはい)とは、その名の通り乗馬したまま酒を飲むために作られたとされる独特な形状の杯だ。最大の特徴は、一般的な盃とは異なり、持ち手となる脚部(高台)が極めて高く、太く作られている点にある。これにより、手袋や甲冑を装着した状態であっても指先でしっかりと保持することができ、馬の揺れにも耐えうる実用性を備えている。
歴史・文化財的な視点から見ても、馬上杯の出自には非常に興味深い背景が存在する。元々は大陸の騎馬民族が使用していた器がルーツとされ、室町時代から戦国時代にかけて日本へ渡来、あるいは独自の発展を遂げた。陶器や磁器だけでなく、漆塗りや金属製のものまで幅広く作られており、今日では酒器・伝統工芸品としても高い評価を得ている。機能性と美しさが高次元で融合したその姿は、実用を重んじつつも風雅を解した戦国武士の気質を見事に表現していると言えるだろう。