インターネット上の掲示板やSNSでは、長年にわたり「冨樫は新作ゲームが出たから休載に入った」「国民的RPGに没頭して漫画を描いていない」という言説が半ば定説のように語られてきました。いわゆるドラゴンクエスト噂の真相です。
この噂が広まった背景には、過去のジャンプ巻末コメントでゲームのやり込みに言及していた事実や、連載初期の茶目っ気ある発言が切り取られ、休載のタイミングとゲームの発売時期がたまたま重なったことがあります。しかし、現場をよく知る出版関係者や元アシスタントらの証言を総合すると、この説は完全に実態を見誤っています。
実際には、ベッドの上に腹ばいになり、クッションを胸の下に敷き詰めて固い画板をあてがいながら、脂汗を流して1コマずつペンを走らせる日々が続いていました。何日も横になったまま天井を見つめるしかない療養生活の苦悩は、外部からは見えません。ネット上の「遊んでいる」というパブリックイメージと、作家が直面している「筆を握ることすら叶わない肉体の悲鳴」との間には、残酷なまでの認識の乖離が存在していたのです。