「春愁」がなぜ他の卒業ソングと一線を画す説得力を持つのか。その最大の理由は、「大森元貴が自身の高校の卒業式当日に自宅へ戻り、その足で書き上げた」という生々しい制作背景にあります。
当時、すでにメジャーデビューを果たし、音楽活動と学業の両立に追われていた大森。通信制高校の卒業式に出席した彼は、式典が終わった直後、クラスメイトたちが写真を撮り合い、急に名残惜しそうに肩を抱き合う光景に強い違和感を覚えたと語っています。「普段そこまで深く関わっていなかったのに、なぜ最後の日だけ急に親密そうに振る舞えるのだろう」という冷めた視線。そして、その輪に心から溶け込めない自分自身の疎外感でした。
式を終えて帰宅した大森は、制服を脱ぐ間も惜しむように自室にこもり、鍵を閉めて鍵盤に向かいました。胸の中で渦巻いていたのは、清々しい感動ではなく、割り切れない怒りや寂しさ、そして人間関係に対する脆さへの諦念。その瞬間の剥き出しの感情をそのまま五線譜に叩きつけた結果、わずか30分足らずで「春愁」の原型が完成したのです。