「なぜ、これほどまでに久留米ばかりが大雨に見舞われるのか」――ネット上でも繰り返されるこの疑問には、単なる偶然では片付けられない明確な地理学的・気象学的メカニズムが存在します。有明海から筑後平野へと抜けるルートは、南西から吹き込む大量の水蒸気(暖湿流)にとって遮るもののない巨大な「湿気の回廊」となっています。この湿った空気が、久留米市の南東に壁のようにそびえ立つ耳納連山(高良山・鷹取山など)に直角に衝突することで強制的に上昇気流が生じ、連続して巨大な積乱雲が組織化されるのです。
これが、いわゆる久留米市線状降水帯最新情報でも常に警戒される「バックビルディング現象」の正体です。風上で次々と新しい雨雲が発生し、それが上空の風に乗って久留米市街地を連続して通過するため、同一エリアに何時間も猛烈な降水が集中します。加えて、夏季の強い日射で地表が熱せられると、内陸性のゲリラ豪雨発生理由である上空寒気との温度差が極大化し、わずか15分の間に雷鳴とともに猛烈なダウンバーストや雹(ひょう)を伴う嵐へと変貌します。
さらに見逃せないのが水理学的な「排水の限界」です。市域を東西に貫く九州最大の河川・筑後川は勾配が極めて緩やかで、上流の日田・うきは方面からの流入量が増えると一気に本流水位が上昇します。すると、市街地の水を筑後川へ流している支流(小瀬川、陣屋川、筒川など)の水門を閉じざるを得なくなり、都市部に降った雨が行き場を失って溢れ出す「内水氾濫」が必然的に引き起こされます。久留米が水害に脆弱なのは、雨の降り方だけでなく、平野部の水を受け止める地形そのものに構造的宿命を背負っているからです。