1984年10月4日、ドイツ・ミュンヘンで旧ユーゴスラビア系の家庭に生まれたサーシャ(本名:アレクサンダー・バイン)。彼自身も将来を有望視されたプロテニス選手でしたが、20代前半で父親が自死するという深い悲劇に見舞われ、ツアー選手としての道を断念せざるを得ませんでした。
失意の底にあった彼に転機が訪れたのは2007年。女子テニス界の生ける伝説、セレナ・ウィリアムズのヒッティングパートナーに抜擢されたことです。190cm近い屈強な体躯から放たれる男子顔負けの強打を受け止め続け、時に精神的支柱としてセレナを支えた期間は実に約8年間に及びました。その後、ビクトリア・アザレンカやキャロライン・ウォズニアッキといった名だたるトップランカーのサポートチームを歴任し、「勝者のメンタリティ」を現場で徹底的に吸収していきました。
そして2017年末、大坂なおみのツアー専属コーチに就任。当時世界ランキング68位だった大坂に対し、徹底したポジティブ思考の注入とフットワークの改善、メンタルの安定を促すアプローチを実行しました。その結果、2018年3月のインディアンウェルズ優勝、同年9月の全米オープン制覇へと結実。この功績が評価され、同年に新設された「WTA年間最優秀コーチ賞」の初代受賞者という栄誉を手にしました。著書『心を強くするコード 限界を決めないチーム愛の力』では、選手を恐怖で縛るのではなく、深い共感と信頼で導く独自の育成哲学が詳細に記されています。