内水氾濫の現場で最も恐ろしいのは、その「浸水速度の異常な速さ」と「見えない足元の罠」です。過去の水害被災者や現場取材に当たった報道関係者の記録から、典型的な危険パターンが浮かび上がっています。
豪雨の最中、下水道管内の空気と水が圧縮されることで、マンホールの蓋が吹き飛び、大量の泥水が噴水のように逆流する現象が発生します。道路冠水が始まると水深わずか10cm〜20cmでも濁水によって地面が見えなくなり、外れたマンホールの穴や側溝に歩行者が吸い込まれる転落事故が後を絶ちません。
さらに深刻なのが地下街や地下室、立体交差のアンダーパスにおける浸水危険性です。地下空間への浸水は階段を滝のように流れ落ちるため、水圧によって地下の非常ドアが開かなくなります。実験データによると、階段を水深20cm〜30cmの水が流れ下るだけで、成人の力でも自力歩行による脱出は極めて困難になります。車でアンダーパスへ進入し、エンジン停止とともに脱出不能になる水没事故も内水氾濫の典型的な被害例です。