作中で一度たりとも素顔を晒すことがなかった鱗滝左近次。常に赤い天狗の仮面を身につけていることから、初登場時には「威圧的で冷酷な隠世の仙人」という印象を持ったファンも少なくありませんでした。しかし、公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』で明かされた鱗滝左近次がお面を被る理由は、読者の予想を心地よく裏切るものでした。
公式設定によると、面を被っている直接の理由は「素顔が優しすぎて、対峙した鬼に馬鹿にされたため」と明記されています。鬼殺の現場において、慈悲深い容貌は敵に侮りを与え、命取りになりかねません。鬼を瞬時に圧倒する威厳を保つための苦肉の策として選んだのが、憤怒の形相をたたえた天狗面でした。つまり、あの険しい仮面は冷徹さの象徴ではなく、本来持ち合わせている並外れた温厚さと優しさを覆い隠すための防具だったわけです。
また、鱗滝左近次の素顔そのものについては、本編や外伝を通じて具体的なビジュアル描写は描かれないまま完結を迎えました。作画スタッフや原作者・吾峠呼世晴先生の徹底した演出意図が感じられる部分ですが、その目元や声音の端々からにじみ出る温かさは、厳しさの中に宿る深い人間性を雄弁に物語っています。
なお、鱗滝左近次の年齢と本名に関して検証すると、本名はそのまま「鱗滝左近次」であり、年齢は明確な生年月日は非公開ながら、物語開始時点で推定70代前半から半ばと見られています。江戸時代後期から明治、大正へと激動の時代を刀一本で生き抜き、前線から退いた後も次代の育成に命を捧げてきた老練の剣士です。