公開から数十年が経過した現在でも、なぜ映画『ウォータームーン』のDVD化や配信(サブスク)が実現しないのでしょうか。ネット上では「暴力的な内容がコンプライアンスに抵触した」「薬物事件が影響した」といった憶測が散見されますが、これらは事実と異なります。
真相は、制作段階における「クリエイティブの衝突」が引き起こした原盤権・二次利用権をめぐる権利者間の凍結にあります。本作は当初の脚本から大幅に改変されて製作された経緯から、脚本クレジットや演出の帰属、製作サイド(東映)と主演・原案側の意向が複雑に入り組む結果となりました。
さらに長渕剛自身にとっても、自身のキャリアにおいて激しい衝突と後味の悪さを残した作品であり、自らの映像アーカイブとして積極的に再発売や配信流通を推し進める動機が希薄であったと指摘されています。映像ソフト化やストリーミング配信には、主演俳優の所属事務所、監督・脚本家など著作権者全員の許諾が不可欠です。誰か一方が明確に再商品化を望まない限り、権利クリアランスのテーブルにすら載らないのが映画ビジネスの鉄則であり、本作はその「大人の沈黙」に縛られたまま現在に至っています。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
『ウォータームーン』は、誰にでも気楽に勧められる娯楽エンターテインメントではありません。昭和・平成の日本映画史における特殊な特異点として捉えるべき作品です。
- 視聴を強く推奨できる人:
- 80年代末期〜90年代初頭の長渕剛が放っていた圧倒的な表現力・身体性をコンプリートしたい熱烈なファン
- 名匠・工藤栄一のフィルモグラフィにおける異端の実験作をフィルム史の観点から検証したい映画研究者
- 予定調和を完全に拒絶した、商業映画の枠組みを超えた「歪な熱量」を体感したいカルト映画愛好家
- 鑑賞を避けるべき・慎重になるべき人:
- 『とんぼ』『英二』のような痛快な極道アクションやストレートなピカレスクロマンを期待している人
- 論理的な伏線回収や整合性の取れたシナリオを重視するストーリー重視派の観客
- VHS再生環境を持たず、高画質な4KやフルHD配信で手軽に映画を楽しみたいライト層