ネット上の情報空間には、京大病院に関する極端な誇張や誤認が少なからず存在します。受診にあたって惑わされないよう、代表的な3つの誤解を正しておく必要があります。
第一の誤解は、「紹介状さえ書いてもらえば、希望する高名な名医に必ず診てもらえる」という思い込みです。大学病院の外来担当医は、専門領域や研究日程、手術日によって厳格にシフトが組まれています。一般の初診外来では担当曜日や枠の空き状況に応じた医師が割り当てられるのが通例であり、特定の教授や著名医師を患者側が指名して初診受診することは基本的にできません。主治医の指定を強く希望する場合は、公式に設けられた「セカンドオピニオン外来(自由診療枠)」を申し込むのが正しい手続きです。
第二の誤解は、「お金(選定療養費)さえ払えば、紹介状がなくても最善の治療を最優先で受けられる」という勘違いです。前述の通り、11,000円の選定療養費は「フリーアクセスに伴う病院側の過剰負担を抑制するためのペナルティ的費用」であり、優先受診の権利を買うためのファストパスではありません。むしろ、これまでの病歴や投薬歴が記載された紹介状がない状態での診療は、医師にとっても病状把握にゼロから時間を割かねばならず、患者にとっても検査の重複など不利益が生じやすくなります。
第三の誤解は、「一度京大病院で診てもらえれば、持病が完治するまで何年間でもずっと通い続けられる」という見込みです。特定機能病院には、急性期治療を終えて病状が安定した患者を地域の医療機関へ逆紹介する義務があります。「大きな病院のほうが安心だから」と通院継続を固執しても、医師から他院への転医を促されるのは制度上の必然であり、冷遇されているわけではありません。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
医療社会学的な観点から見ると、日本の医療提供体制は「何でも大学病院へ」という昭和・平成的な大病院志向から、医療機関ごとの機能分化と役割分担を徹底する時代へと完全にシフトしています。京大病院という貴重な最高峰の医療リソースを最大限に活かすためには、受診者側のリテラシーが問われます。
【京大病院の受診を強くおすすめできる人】
- 地域の基幹病院を受診したものの確定診断がつかず、希少難病や特殊な病態が疑われる人
- 標準治療では効果が不十分であり、先進医療、新規臨床試験(治験)、がんゲノム医療の可能性を模索したい人
- 高難度手術や特殊な集学的治療が必要とされ、主治医から正式に転医やセカンドオピニオンを推奨された人
【京大病院への受診を慎重に再考すべき人】
- 風邪、軽度の生活習慣病、一般的な慢性疾患など、地域のクリニックで十分に対応可能な初期症状の人
- 待ち時間なくスピーディに診察を受け、日常的な体調相談や手厚いコミュニケーションを最優先したい人
- 紹介状の取得を面倒に感じ、1万円を超える選定療養費の支払いに納得がいかない人
医療において「大きな病院に行くこと=最善の医療体験」とは限りません。自らの病状の深刻度を客観的に見極め、適切なタイミングで適切なステージの医療機関を選択することこそが、最速の回復への近道となります。