朝井リョウが早稲田大学在学中に執筆し、第22回小説すばる新人賞を受賞した原作小説『桐島、部活やめるってよ』は、各章ごとに語り手が変わる一人称オムニバス形式を採用しています。登場人物の内面独白を丁寧に積み上げ、地方都市の閉塞感とスクールカーストのグラデーションをリアルに描いた原作に対し、映画版は極めて大胆な解体と再構築を敢行しました。
最大の違いは、時間軸の反復構造です。映画は「金曜日」という同一の時間を、前田の視点、宏樹の視点、バレー部の視点、吹奏楽部の沢島亜矢(大後寿々花)の視点と、幾重にも角度を変えて描き直します。ある生徒にとっては取るに足らないすれ違いが、別の生徒にとっては世界の終わりを意味するような決定的一瞬である事実を、視覚的・立体的に体感させる構造へと昇華させました。
さらに配役の妙が、この解体劇に圧倒的な説得力を与えています。映画オタクの前田を演じた神木隆之介の憑依的な眼差し、スタイル抜群でありながら進路も部活も中途半端な宏樹を演じた東出昌大の圧倒的な「空虚な美男子」の佇まい。そして、上位女子の陰湿さと打算を容赦なく体現した沙奈役の松岡茉優。若き俳優陣が放つ剥き出しの身体性が、活字以上に生々しくスクールカーストの残酷さをスクリーンに焼き付けました。