「テレビで見かけるメガネ芸人の大半は、実は視力が悪くないのではないか」。SNSやネット掲示板で定期的に盛り上がるこのトピックですが、現場の証言や過去のインタビューを精査すると、メガネ芸人伊達メガネの真相にはテレビ制作上の合理的な理由と、パーソナルブランディングの歴史が横たわっています。
スタジオ収録において、レンズ付きのメガネは最大の難敵となります。強烈な照明がレンズに反射すると演者の瞳が見えなくなり、バラエティ番組において生命線となる「視線の泳ぎ」や「瞳の輝き」が視聴者に届きません。そのため、実際には強い乱視や近視を抱えていても、コンタクトレンズを入れた上で「レンズを抜いたフレームだけ」を装着して本番に臨む芸人が後を絶たないのです。
伊達メガネを選んだエピソードとして屈指の知名度を誇るのが、サンドウィッチマン伊達メガネの経緯です。伊達みきおはかつて、その強面すぎる顔立ちから街中で過剰に警戒されたり、職務質問を受けたりするトラブルが頻発していました。そこで「威圧感を減らし、少しでもソフトな印象に見せるため」に薄い色の入ったフレームをかけ始めたと明かしています。コンビ名が「伊達」であることと伊達メガネが重なったのはまったくの偶然であり、生き残りをかけた切実なイメージ戦略が発端でした。
また、宮川大輔メガネ理由と特徴にも独自の美学があります。もともと視力が極端に悪かったわけではない彼が極太フレームをかけ始めたのは、吉本新喜劇時代に先輩芸人たちの中で埋没しないための差別化でした。顔の中心に強い黒のスクエアを配置することで、怒り・驚き・絶叫といったリアクションのダイナミズムが2倍、3倍に増幅されます。彼のトレードマークであるEFFECTOR(エフェクター)の「fuzz」をはじめとする肉厚なセルフレームは、顔面をキャンバスにした舞台装置にほかなりません。