当時のライブハウス現場やファンの熱気は、現代のデジタルな推し活とは全く異なる密度を持っていました。インターネット普及前夜の1990年代、情報源は雑誌の文通コーナーやライブハウスで配られるフライヤー、街頭の手売りテープでした。
当時の現場を知るファンの証言やコミュニティの記録からは、以下のような独自の文化と実態が浮かび上がります:
- 過酷な「チケ発」と電話予約:人気公演のチケット発売日には、公衆電話に十円玉を積み上げてプッシュボタンを連打する「チケ発」が繰り広げられた。
- 厳格なライブ作法とバンギャル文化:最前列の仕切り、ヘドバン、折りたたみ、逆ダイ(逆ダイブ)、手扇子、咲きといった独自のライブマナーが自然発生的に形成された。
- 自主制作デモテープのプレミア化:ライブ会場限定で数百本のみ配布されたカセットテープに数万円のプレミアが付き、音源トレード文化が発展した。
一方で、「敷居の高さ」や「ファンコミュニティ内のヒエラルキー」が新規ファンの参入障壁となっていた側面も否定できません。しかし、この濃密なコミュニティ意識こそが、現在に至るまでV系カルチャーを支え続ける強固な土壌となったことは確かです。