三億円事件が未解決に終わった最大の要因として、警察による致命的な初動捜査のミスが挙げられます。その最たる象徴が、日本中に配布されたあまりにも有名な「犯人のモンタージュ写真」です。
当時、全国の交番や駅に貼られたあの鋭い目つきのモンタージュ写真は、実は目撃者の証言を合成したものではなく、前述の「死亡した少年S」の生前の顔写真をほぼそのまま流用して作成されたものでした。この事実上の捏造に近い合成写真は日本全国に強烈な先入観を植え付け、少しでも顔立ちの似ている人物への誤通報を爆発的に増やしました。結果として捜査本部は膨大な無駄足を踏まされ、真犯人の足取りを見失う決定打となったのです。警察庁は後にこのモンタージュ写真の利用を取りやめましたが、失われた時間は二度と戻りませんでした。
もう一つの深い謎が、三億円事件における盗難紙幣の行方です。強奪された紙幣のうち、500円札2,000枚の記番号は事前に警察によって記録されており、全国の銀行や金融機関にその番号リストが配布されていました。もし犯人が日本国内でこの500円札を使用すれば、即座に足がつくはずでした。
ところが事件から現在に至るまで、記録された記番号の紙幣は日本国内で一枚たりとも発見されていません。500円札のみならず、数千枚に及ぶ1万円札や千円札の流通ルートからも犯行の手がかりは一切浮上しませんでした。この異常な事実は、犯人が金を一円も使えずにドラム缶等で焼却処分したのか、あるいは金融監視の目が届かない海外へ持ち出したのかという深い謎を投げかけています。