家庭科教育関係者や手芸愛好家への実態調査によると、手縫いで最も苦手意識を持たれやすい工程として、実に約68%の人が「玉止め・玉結び」を挙げています。なぜ、玉止めは思うように決まらないのでしょうか。そこには明確な力学的理由が存在します。
失敗の典型例は大きく分けて2パターンあります。第1に「結び目が布から離れた位置にできてしまい、縫い目が緩む現象」、第2に「結び目が小さすぎて布の織り目をすり抜けてしまう現象」です。
前者が起こる最大の原因は、結び目を引き締める瞬間に親指の腹で結び目を布際に押さえつけていないことにあります。糸を針から引き抜く際、押さえが甘いと結び目が糸の張力に引っ張られて空中で締まってしまい、布と結び目の間に数ミリの遊び(隙間)が生まれます。
後者のすり抜けは、布の織り密度と糸の太さのミスマッチから生じます。特にリネンやざっくりしたオックスフォード生地、薄手のニット地などは布目が粗いため、針に糸を1〜2回巻き付けた程度の小さな結び目では、洗濯や着用時の摩擦で容易に布目を通過してしまいます。布地の厚みや織り目の粗さに応じて、巻き付ける回数を柔軟に調整する意識が不可欠です。