「lịch chiếu phim」というフレーズを分解すると、「lịch」は暦やスケジュール、「chiếu」は上映・投光、「phim」は映画(フィルム)を指します。つまり、ベトナム現地で劇場へ行く際に誰もがスマートフォンで打ち込む標準的な検索キーワードです。これが日本のデジタル空間で頻繁に観測されるようになった背景には、単なる言語の混入にとどまらない、明確な社会構造の変化が存在します。
出入国在留管理庁の統計を見ても、日本国内で暮らすベトナム国籍の住民はすでに数十万人規模に達し、生活インフラとしての日本の商業施設やシネコンを日常的に利用しています。休日を楽しむために「lịch chiếu phim Nhật Bản(日本の映画上映スケジュール)」や「lịch chiếu phim TOHO」と検索する生活者のデジタルフットプリントが、日本の検索エンジンのサジェスト機能やトレンド解析に反映されるようになったのが第一の要因です。
さらに見逃せないのが、ベトナム映画日本公開をめぐる熱狂です。近年、ベトナム国内で興行収入数百億ドンを叩き出した大ヒットヒューマンドラマやサスペンス作品が、国際映画祭の枠を飛び越え、日本国内の大手シネコンで特別興行として上映される事例が相次いでいます。劇場側が多言語対応を進める過程で、現地の熱心なファンと、アジアの最先端カルチャーを追う日本のシネフィル(映画愛好家)の関心がこの単語の元に集約されています。