アニメ音楽史に燦然と輝く金字塔でありながら、『新世紀エヴァンゲリオン』主題歌の制作プロセスは、極めてタイトなスケジュールと直感的なプロの職人技によって生み出されました。
作詞を担当した及川眠子氏が数々のテレビ特番や自著の手記で語った証言によると、当時のオファーは極めて突発的なものでした。プロデューサーから渡されたのは、未完成の企画書数枚と、まだ絵コンテ段階の映像クリップのみ。及川氏はアニメ本編の内容をほとんど把握しないまま、マネージャーからの「適当に書いて」という指示を受け、わずか約2時間で歌詞を書き上げたと明かしています。
作曲を手掛けたのは、数々のJ-POPヒットを生み出してきた佐藤英敏氏、編曲は大森俊之氏が担当しました。当初、庵野秀明監督側からはロシア民謡調やクラシック調といった構想も提示されていましたが、プロデューサーの大月俊男氏らの判断により、王道のダンスビートを取り入れたアップテンポな楽曲へと昇華されました。
打ち合わせ時間わずか30分、執筆時間2時間という極限の状況下でありながら、及川氏の研ぎ澄まされたワードセンスと佐藤氏の哀愁を帯びたメロディラインが融合し、奇跡的なケミストリーが発生した瞬間でした。