物語の敵対勢力として暗躍する「つばあり帽の魔法使い」たち。彼らは単なる愉快犯や破壊を好む悪党ではありません。彼らが掲げる大義は、魔法庁が定めた現行秩序を打破し、「すべての人間が自由に魔法を使える世界の奪還」です。
歴史を遡れば、かつて魔法は医療や身体強化などあらゆる分野で無制限に使われていました。しかし、それによって引き起こされた凄惨な戦争と混乱を収束させるため、選ばれた魔法使い(現在のつば広帽)が一般人から魔法の知識を奪い、記憶を操作して「魔法使いは生まれつきの才能」という偽りの神話を定着させた経緯があります。
つばあり帽の幹部であるイグィンの正体とその目的は、まさにこの欺瞞に満ちた管理社会の解体にあります。イグィンがココに目をつけて図書の魔法書を与えたのは、彼女が持つ「掟に染まっていない純粋な発想力」と「母を救いたいという強烈な欠落感」が、硬直した魔法界を打ち破る最大の起爆剤になると見抜いていたからです。
一方、魔法庁の頂点に立つ評議会や魔警団も一枚岩ではありません。秩序を守るための情報統制が本当に正義なのか、民衆を無知のまま囲い込むパターナリズムは正当化されるのか。イグィンたちの過激なテロリズムの裏にある告発は、物語の倫理的な問いを一層深めています。