学名をStomolophus meleagrisと呼ぶこの生き物は、分類学上は刺胞動物門の根口クラゲ目に属する。直径20〜30センチほどの滑らかなドーム状の傘を持ち、一般的なクラゲに見られるような長い触手が垂れ下がっていない。代わりに「口腕」と呼ばれる太く短い構造が中央に凝縮しており、そのコンパクトな姿から通称キャノンボールクラゲの名がついた。
一見すると触手がなく無害に見えるが、実は細胞レベルの毒針を備えている。人間に対する刺傷毒性は比較的弱く、刺されても軽度の発赤や不快感にとどまるケースが多い。しかし、小型の海洋生物にとっては死を意味する。傘を激しく収縮させて水流を生み出し、プランクトンや微小な魚類を粘液で捕らえる独特の摂餌行動を展開する。
特に大規模な生息地であるメキシコ湾では、水温上昇期に数百億匹規模の密集群を形成する。これが海中の養分と酸素を瞬く間に消費し、在来の魚類の産卵場を圧迫。可憐な見た目とは裏腹に、ひとたび増殖すれば地域の生態系ピラミッドの頂点を脅かしかねない構造的リスクを秘めているのだ。