八甲田丸における最大の見どころであり、世界的にも極めて高い産業遺産価値を持つのが1階に広がる車両甲板(しゃりょうこうはん)です。青函連絡船は、人間だけでなく本州と北海道を結ぶ貨車や客車を「車両ごと船に乗せて運ぶ」という特殊な役割を担っていました。
船尾の扉から船内へと引き込まれた4本の軌道(線路)には、往時に活躍した名車両が堂々と展示されています。
- キハ82形特急形気動車:かつて北海道内を駆け巡った名特急「おおぞら」や「北斗」の先頭車両。美しい国鉄特急色を保ち、優雅な先頭形状が往年の鉄道旅を想起させます。
- DD16形ディーゼル機関車:ローカル線や車両入換用として活躍した小型ディーゼル機関車。狭小な線路配置に対応した機能美が際立ちます。
- オユ10形郵便車:車内で郵便物の仕分け作業を行っていた移動郵便局車両。現存数が極めて少ない貴重な郵便鉄道遺産です。
- ヒ600形控車:連絡船と岸壁の間で機関車の重みによる沈み込みを防ぐために連結された、連絡船専用の特殊車両。
船底の重厚なリベット打ち構造と冷たい鉄の匂い、そして船内に敷かれた本物のレールの上に鎮座する車両群を目の当たりにすると、当時の国鉄技術陣が成し遂げた海上鉄道輸送のスケールの大きさに圧倒されます。さらに車両甲板の下層(第1主機関室)へと降りれば、船を動かしていた巨大な8基のディーゼルエンジンが整然と並ぶ圧巻の光景を間近で見学可能です。