北鎌倉駅から線路沿いを歩くこと約8分。踏切の警報機が遠ざかるにつれ、空気がひんやりと変わる。浄智寺の象徴とも言えるのが、すり減って丸みを帯びた鎌倉石の階段だ。何世代もの参拝者が踏みしめ、雨風にさらされてできた凹凸は、まるで生き物の背中のようでもある。
この階段を上ると、珍しい中国風の鐘楼門(山門)が姿を現す。花頭窓から覗く新緑や紅葉は、切り取られた一幅の絵画のようだ。鎌倉五山第四位という格式を持ちながらも、ここには威圧的な巨大建築はない。むしろ、自然の地形に溶け込むように配置された伽藍が、訪れる者の心をすっと落ち着かせてくれる。