「応援の意味でグッドラックと言ったのに、相手が一瞬嫌な顔をした」「同僚から冷笑混じりにグッドラックと言われた」。SNSや国際交流の現場では、こうした違和感を訴える声が後を絶たない。その原因は、英語特有の「サーカズム(sarcasm=皮肉・当てこすり)」の文化にある。
特に危険なのが、語尾に「with that」を付けた「Good luck with that.」というフレーズだ。これを平坦なトーンや肩をすくめながら発音した場合、その真意は「(そんな無謀なこと、成功するわけがないが)せいぜい頑張れば」「勝手にすれば」という強い諦念や突き放しに反転する。
対人コミュニケーション心理学の観点から見れば、これは直接的な批判を避けつつ相手への不賛同や呆れを伝える「受動攻撃(パッシブ・アグレッシブ)」の一種として機能する。無謀な計画を語る相手に対し、「それは無理だ」と正面から反論する代わりに、「Good luck with that(うまくいくといいね)」と冷ややかに返すことで、言外に「失敗は目に見えている」というメッセージを突きつけるのだ。
言葉通りのポジティブな意味なのか、それとも辛辣なスラング・皮肉なのかは、「話者の表情」「声のトーン」「直前に話していた話題の現実味」という文脈情報(コンテクスト)から正確に読み取る必要がある。