脳ドックのMRI検査(特にT2強調画像やFLAIR画像)で発見される直径数ミリメートル程度の小さな病変は、医学的には無症候性脳梗塞と定義されます。脳の奥深くへ血液を送る細い血管(穿通枝動脈)が、高血圧や加齢による動脈硬化で詰まるラクナ梗塞の原因と同じメカニズムで発生します。
自覚症状が出ない理由は極めて明快です。人間の脳には、運動や言語、感覚などの生命活動に直結する重要中枢と、比較的症状が表に出にくい領域(深部白質や大脳基底核の一部)が存在します。隠れ脳梗塞は、この「症状が出にくい場所」に極めて小さく生じるため、本人が気づかないうちに組織が虚血・壊死を起こしているのです。
日本脳ドック学会の集計データによると、無症候性脳梗塞の保有率は年齢とともに急激に上昇します。50代で約10〜20%、60代で約30%、70代以上では半数近くの人に見つかると報告されており、決して珍しい現象ではありません。しかし、「誰にでもある加齢現象」と片付けるのは極めて危険な誤認です。