現在でこそ驚異的なポジショニングとワンタッチでネットを揺らす「完全無欠の点取り屋」として記憶されるロナウドですが、マンチェスター・ユナイテッド初期のプレースタイルは、極端なまでにタッチライン際を主戦場とする生粋のウインガーでした。現在YouTubeなどのアーカイブ映像で確認できる当時の姿は、ボールを持つたびに5回も6回もシザース(またぎフェイント)を繰り出し、相手ディフェンダーを翻弄することに快感を覚えるトリッキーなドリブラーそのものです。
当時の英国メディアやサポーターからの評価は、決して称賛一色ではありませんでした。「サーカスのような足技に終始し、肝心な場面でクロスを上げない」「プレーが自己中心的で効率に欠ける」といった批判が浴びせられ、相手チームの荒々しいタックルに倒れると「ダイバー(シミュレーションを行う選手)」のレッテルを貼られることもしばしばでした。
転機となったのは、日々の練習場キャリントンでの過酷な揉まれ合いでした。ポール・スコールズやロイ・キーンといった歴戦のベテランたちは、無駄なフェイントを連発する生意気な新星に対し、練習中であっても容赦ない削りタックルを浴びせました。「無駄を削ぎ落とし、いつボールを離すべきか」を身体に叩き込まれたのです。さらに、当時の名参謀レネ・ミューレンステーンコーチとの個人トレーニングを通じて、「美しいゴールではなく、泥臭く得点を量産する習慣」を叩き込まれたことで、無尽蔵のエネルギーがドリブルからゴールへと直接変換されるようになっていきました。