市川亀治郎として初舞台を踏んで以来、その圧倒的な口立てと切れ味鋭い踊り、そして何より役の心理を深掘りする眼光で観客を心酔させてきた。三代目市川猿之助が打ち立てた澤瀉屋の巨木を受け継ぎ、2012年に四代目市川猿之助を大襲名。その瞬間、伝統芸能界における彼の立場は「次代の俊英」から「歌舞伎界を担う大黒柱」へと完全に脱皮した。
彼が重んじたのは、単なる古典の復元ではない。先代が築き上げた宙乗りやスピード感を現代の感性で再解釈し、古典劇の核心にある人間味をいかに表現するかという点だった。歌舞伎の神髄を守りながらも、型に固執せず新しい息吹を吹き込み続ける態勢は、共演者や松竹株式会社の制作陣をも常に唸らせていた。