処刑を目前にした近藤勇が遺したとされる辞世は、漢詩の形式で記されています。そこには、自らの出自を超えて武士道に殉じようとした魂の叫びが刻まれていました。
【近藤勇の辞世(漢詩)】 孤軍 たすけ落ちて 俘囚となる
顧みて 恩愛を思えば 涙さらに流る
接霊 まさに断えなんと欲して 復た遺すことなし
仇を報じ 志を果たすは 唯死あるのみ
この詩の意味は、「味方の援軍もなく孤立して捕虜となってしまった。振り返って主君(徳川家)の恩義や家族・隊士への情愛を思えば、無念の涙がとめどなく流れる。我が命は今まさに絶えようとしており、この世に思い残す言葉もない。君恩に報い、己の志を完遂する道は、ただ命を捧げること(死)あるのみだ」というものです。
百姓の家に生まれながら誰よりも「武士らしくあること」を求め続けた近藤勇。罪人として首を刎ねられる直前まで、徳川幕府への忠誠と仲間への恩情を胸に抱き続けていた内面が、この格調高い漢文から痛切に伝わってきます。