日本国内における大ヒットを語る上で、吹き替えキャストの圧倒的な功績を外すことはできない。ドリー役の室井滋と、マーリン役の木梨憲武。当時のアニメーション吹き替えとしては型破りとも言えるキャスティングだったが、結果として完璧なケミストリーを見せつけた。
特に室井滋によるドリーの怪演は、原語版のニュアンスを完全に咀嚼した上での日本的な哀愁と無邪気さを見事に両立させた。早口で捲し立てるコミカルなテンポ感の裏で、ふと見せる心許ない声の震え。スタジオ関係者の証言によると、アフレコ現場では即興的なニュアンスがいくつも試され、単なる翻訳を超えた「生きた言葉」が吹き込まれていった。木梨憲武の神経質かつ愛情深い父親像と室井の奔放なドリーの掛け合いは、今も日本の洋画吹き替え史における金字塔として語り継がれている。