生態学的観点からも、不気味な異変が報告されている。産卵場であるマリアナ海溝付近から日本沿岸へと稚魚を運ぶ「黒潮」の流れが、ここ数年の海水温上昇と地球規模の気候変動によって不安定化しているのだ。海洋学者の分析によれば、黒潮の大蛇行や流速の変化が、シラスウナギの到達時期や到達数に直接的な影響を与えているという。
資源保護の努力を進めても、地球環境そのものが変化してしまえば天然個体群の回復は望めない。研究チームは海洋観測衛星と水温センサーネットワークを駆使し、回遊ルートの予測モデル構築を急いでいる。人間の経済活動が海洋生態系に与えたダメージの深さを、ウナギの回遊が改めて突きつけている。