黒死牟を撃破した後も、悲鳴嶼行冥に休む時間はありませんでした。そのまま鬼の始祖・鬼舞辻無惨との最終決戦へ突入します。無惨の広範囲に及ぶ触手攻撃によって左足を切断されるという致命傷を負いながらも、彼は片足で立ち上がり、鎖を自らの体に巻きつけて無惨の巨大化を食い止め、太陽光の下へ引きずり出しました。
「薬は他の若者たちへ」誇り高き最期
夜が明け、無惨が日光によって消滅した直後、悲鳴嶼の肉体は完全に限界を迎えていました。すでに痣の代償と多量出血、毒の巡りによって死期が迫る中、駆け寄った隠(かくし)の医療班が懸命に解毒薬を投与しようとします。しかし悲鳴嶼はそれを静かに制止しました。
「薬を使うな。私にもう助かる命はない。その薬を、未来ある若い隊士たちへ回してくれ」
自らの命を完全に諦め、次世代のためにすべてを譲るその崇高な姿に、現場にいた隊士たちだけでなく、読者全員が涙を呑みました。
子供たちとの和解と魂の救済
死の淵で薄れゆく意識の中、悲鳴嶼の前にかつて寺で命を落とした子供たちの魂が現れます。子供たちは泣きながら悲鳴嶼に縋り付き、あの夜の真相を語り始めました。
「先生を置いて逃げたんじゃない。先生の目が悪かったから、外へ武器を取りに行こうとしたんだ」「先生を助けるために、人を呼びに行こうとしたんだよ」
子供たちは悲鳴嶼を見捨てたのではなく、大好きな先生を守るために必死で外へ駆け出していたという真実。悲鳴嶼の頬を伝っていた「不信と悲哀の涙」は、最期に「安堵と感謝の涙」へと変わりました。「そうか……ありがとう。さあ、行こうか」と子供たちと手を繋ぎ、抱き締められながら、悲鳴嶼行冥は27年の過酷な生涯を穏やかな笑顔で閉じました。
現代への転生|幼稚園の先生として
単行本最終巻で描かれた現代編(第205話)では、悲鳴嶼の生まれ変わりと思われる大柄な男性が登場します。彼は「幼稚園の先生」として、元気いっぱいに駆け回る園児たちを温かい笑顔で見守っていました。かつて守りきれなかった子供たちと、平和な現代で再び心を通わせ、笑顔で子供たちを包み込むその姿は、多くのファンにとって最高の救済として深く胸に刻まれています。